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最高裁判所第二小法廷 昭和46年(オ)1105号 判決

上告人

五神殖産興業株式会社

代理人

万谷亀吉

外二名

被上告人

太田太郎

代理人

寒河江晃

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人万谷亀吉、同金綱正巳、同復代理人山下義則の上告理由第一点について。

起訴猶予処分は、民訴法四二〇条二項後段にいう有罪の確定判決を得られない場合にあたると解するのが当裁判所の判例(最高裁昭和四〇年(オ)第四二三号同四一年九月六日第三小法廷判決、民集二〇巻七号一三〇五頁)であり、これと同趣旨の原判決の判断は正当であつて、原判決に所論の違法は認められない。したがつて、論旨は採用することができない。

同第二点について。

原審の適法に確定する事実関係、すなわち、被上告人と上告人間の横浜地方裁判所昭和四一年(ワ)第六九四号所有権移転登記手続請求事件について被上告人欠席のまま上告人勝訴の判決がされたこと、被上告人は、右訴訟の訴状および第一回期日呼出状の毀棄行為について昭和四二年一二月一日太田花子を公文書毀棄容疑で横浜地方検察庁に告訴し、これに対し昭和四三年一月一八日頃同検察庁検事がこれを起訴猶予処分に付したこと、さらに、被上告人は、その余の期日呼出状の毀棄行為および判決正本の隠匿行為について昭和四四年一一月一一日付をもつて同女を同様に告訴し、これに対しても昭和四五年一月一二日同検事が起訴猶予処分に付したこと、これらの起訴猶予処分はいずれも犯罪の嫌疑あるも情状により起訴を猶予するを相当とする意味での起訴猶予処分であつたこと、被上告人は、太田花子の右公文書毀棄ないし隠匿行為のため被上告人と上告人間の前記訴訟についてその係属およびその進行についてなんらこれを知るところなく欠席のまま判決を受けるに至つたことなどの事実関係のもとにおいては、被上告人の本件再審の訴には、民訴法四二〇条一項五号および同条二項後段に該当する事由があるものというべきであるから、これと同趣旨の原判決の判断は正当である。同居の妻であつても、同条一項五号にいう「他人」にあたると解した原判決になんらの違法は認められない。原判決に所論の違法はなく論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(色川幸太郎 村上朝一 岡原昌男 小川信雄)

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